おかしな話

更新:2025年08月18日

お菓子のこと

名古屋のソウルフード「たません」──駄菓⼦屋⽣まれの愛され味

知る⼈ぞ知る、名古屋の隠れた名物

名古屋といえば、きしめん、ひつまぶし、味噌煮込みうどん──数々の名物グルメが思い
浮かびますが、地元の⼈たちの⼼に深く根付いている、もう⼀つの愛されソウルフードが
あります。それが「たません」です。

「たま」は卵、「せん」はせんべい。名前だけ聞くと「なんだそれ?」と思うかもしれま
せんが、実はこれ、名古屋の駄菓⼦屋で⽣まれた庶⺠の味。シンプルなのに、なぜか無性
に⾷べたくなる、不思議な魅⼒を持った⼀品なのです。

昭和30〜昭和40 年代、駄菓⼦屋の⼩さな発明

たませんのルーツは、昭和30年代から昭和40年代の名古屋市南区笠寺にある「⽵内商
店」だと伝えられています。
ある⽇、駄菓⼦屋にやってきた⼦どもが「ばら売りのせんべいを鉄板で焼いてほしい」と
リクエスト。店主がそれに応えて、ついでに卵と合わせて焼いてみたところ、これが⼤好
評。⼦どもたちの間で話題になり、あっという間に定番メニューになったそうです。
駄菓⼦屋の温かい鉄板、⽴ち上る湯気、そして⼦どもたちの笑顔。そんな⽇常の⼩さな発
明が、名古屋の⾷⽂化を彩る⼀品になるなんて、誰が想像できたでしょうか。

意外にも奥深い、たませんの世界

⼀⾒すると単純な「卵とせんべい」の組み合わせですが、実は各店舗やご家庭によって、
様々なアレンジが楽しまれています。チーズを加えて濃厚にしたり、ウインナーを挟んで
ボリュームアップしたり。中には⼩さなたこ焼きを挟む「たません×たこ焼き」という、
名古屋ならではの合わせ技も。
興味深いのは、⼤阪にも「たこせん」という似た料理があること。どちらが先かは定かで
はありませんが、たません・たこせん共に昭和40年代に誕⽣したとされ、使⽤されるせ
んべいは愛知県碧南市産が多いという共通点もあります。関⻄と東海、離れた地域で似た
ような「せんべい料理」が⽣まれたのも、⾷⽂化の⾯⽩さですね。

⼭三商会とのつながり

たませんに⽋かせない⼤判のえびせんべいは、現在、⼭三商会の看板商品です。⻑年の経
験を活かし、地域の味を守りながら、これからも皆さまに愛される商品をお届けしていき
ます。

家庭でも楽しめる、たませんの作り⽅

そんな名古屋の味を、ご家庭でも簡単に楽しんでいただけるよう、基本的な作り⽅をご紹
介します。⼭三商会としても、この庶⺠的で愛らしい料理が、より多くの⽅に愛されるこ
とを願っています。

【材料】(1 ⼈分)

・⼤判えびせんべい:1枚
・卵:1個
・お好みソース:適量
・マヨネーズ:適量
・天かす(揚げ⽟):⼤さじ2
・⻘のり:適量

【作り⽅】

1.せんべいの準備
まずは主役のせんべいを⽤意。⼤判のえびせんべいがベストですが、⼿に⼊らない場合は普通のえびせんべいでもOK。
2.卵を焼く
フライパンで卵を焼きます。⽬⽟焼きでも薄焼き卵でも、お好みで。半熟がおすすめ。
3.ソースを塗る
せんべいにお好みソースを塗ります。たっぷりと、でも塗りすぎないように。
4.卵をのせる
焼いた卵をせんべいにそっとのせます。このワクワク感がたまりません。
5.天かすをトッピング
天かすをパラパラと。この⾷感がアクセントになります。
5.仕上げ
マヨネーズをかけて、⻘のりをふりかけます。彩りも⼤切。
5.完成
せんべいを半分に折りたたんで完成!熱々をどうぞ。

素朴だからこそ、愛される理由

たませんの魅⼒は、なんといってもそのシンプルさにあります。特別な材料も、難しい技
術も必要ない。でも、だからこそ各家庭の味が⽣まれ、それぞれの思い出が詰まった⼀品
になるのです。
駄菓⼦屋の⽚隅で⽣まれた⼩さな発明が、半世紀以上経った今でも愛され続けている。こ
れは、⼈を幸せにする⾷べ物の本質を物語っているのかもしれません。お菓⼦づくりに携
わる私たちも、この「シンプルだけど特別」という精神を、いつも⼼に留めています。

今度名古屋を訪れた際は、ぜひ地元の駄菓⼦屋で本場のたませんを味わってみてくださ
い。そして、ご家庭でも気軽に作って、⼤切な⼈との時間を彩る⼀品にしていただけたら
嬉しいです。