おかしな話

更新:2026年03月25日

山三商会のこと

売れるお菓子を、やめた日。―山三商会が選んだ、もうひとつの挑戦―

えびせんべい市場で、一番売れているのは「ミックス系」。袋の中にいろいろな種類のえびせんべいが入った、にぎやかなお菓子。お土産売り場などで見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

その次に人気なのが、「満月」と呼ばれるえびせんべい。海老の姿がそのまま見える、あの小さな白く丸いせんべいです。

この二つのお菓子には、ある共通点があります。それはどちらも、油で揚げて作られる菓子(名称:油菓子)が入っているということ。

人気の市場の中で

南知多町は、えびせんべいの産地として知られる町です。多くのメーカーが、それぞれの技術でさまざまなえびせんべいを作っています。

山三商会もその一つ。1954年の創業以来、この町でえびせんべいを作り続けてきました。

もちろん、「ミックス」や「満月」のような、油で揚げてつくる菓子も販売していた時期があります。市場としても大きく、需要もある。販売数だけを考えれば、続けていくことが自然な選択だったかもしれません。

けれど、あるとき会社の中で、こんな問いが生まれました。

「自分たちは、どんなお菓子を作り続けたいのだろうか。」

その問いが、ひとつの大きな決断につながっていきます。

売れる商品を、やめる決断

山三商会は、ある決断をしました。
ミックス、イカ天、タコ天。売上の上位を占めていた油菓子(揚げ菓子)の商品を、2022年に思い切ってやめることにしたのです。

市場としてはまだまだ広く、人気もあるジャンル。それでも、その道から離れることを選びました。

理由の一つは、油で揚げるお菓子ならではの“油の問題”でした。油を使う食品は、どうしても酸化が起こりやすくなります。賞味期限にも影響が出ます。

もし海外に届けようとするなら、賞味期限を延ばす必要があります。そのためには、添加物に頼ることになる場合もあります。けれど、それは山三商会が大切にしてきたお菓子づくりとは、少し違っていました。

二つの方針

山三商会には、ものづくりの大きな方針があります。

ひとつは、安心安全なお菓子を届けること。
もうひとつは、南知多から世界へ挑戦すること。

一見すると、あまり関係のない二つの言葉のように見えるかもしれません。けれど実は、この二つは深くつながっています。

世界へ商品を届けようとすれば、長い輸送時間にも耐えられる品質が必要になります。そして何より、どこの国の人にも安心して食べてもらえるお菓子でなければなりません。

その答えの一つが、油を使わない「押し焼き製法」(鉄板で押しながら焼き上げる製法)のえびせんべいでした。山三商会は、大判の丸いせんべいづくりに集中する道を選びます。


■南知多から世界へ

油を使わず、鉄板で押しながら焼き上げる大判せんべい。シンプルな製法だからこそ、焼き加減や原材料が味を左右します。

山三商会は、得意先様からのOEMやPB商品のご相談に応えながら、生産力、品質管理、納期対応といった強みを磨き続け、大判せんべいの技術を積み重ねてきました。

その結果、いまでは多くの企業から「大判せんべいなら山三商会」そう言っていただけるようにもなりました。

南知多の小さな町で焼かれる一枚のせんべい。その先には、世界があります。

いつか、エッフェル塔の前で。パリジェンヌが大判せんべいをかじっている。
そんな光景を、思い描きながら。

【代表取締役社長 野口英司の想い】